「ギニーピッグ3 戦慄!死なない男」(英題:HE NEVER DIES) 制作国:日本 1986年 監督:久住昌之 ギニーピッグシリーズにはWAHAHA本舗の芸人さんが多く出演されていますが、その流れは本作から始まりました。画像は北米版DVDの映像特典に収録されているスチール写真ですが、スッゴい不気味です。 続いてスチール写真をもう一枚。上のと併せてスチールだけ切り取ってみると、めちゃくちゃブラックな絵ですよね(^ω^;) | 80年代を代表する邦画スプラッター・ギニーピッグ。第1弾「悪魔の実験」、第2弾「血肉の華」とドキュメント・スナッフ的な悪趣味な極まる残虐映像で衝撃を与えたギニーピッグシリーズだが、この第3弾「戦慄!死なない男」はそれまでの作風と打って変わり、一人の冴えない会社員の憂鬱をスプラッター描写を織り交ぜながらもギャグタッチに描いたブラック・コメディになってしまった!Σ(・ω・ノ)ノ 会社でも私生活でもうだつが上がらないサラリーマン。会社では上司に怒鳴られ、同僚には馬鹿にされ、私生活にも何の楽しみもなく、ただ会社と家との往復を繰り替えすだけの日々。そんな生活に嫌気がさした彼は引き籠り、無断欠勤を続ける。精神を病んだ彼はその内に手首を切りだすのだけど、なぜだか手首を切っても全く平気だった。ならこんなことしても?と彼は手首を切断するが、頸動脈を切ろうが、首をロープで絞めようが、どんなことをしても彼は死なない。 最初は落胆するも、自分が死なない男であることに徐々にテンションが上がってきた彼は、誰かを驚かせようと会社のリア充な後輩を自宅に呼びつける。三角定規をこめかみに突き刺しながら内臓を取り出しては浴びせつけ、最終的には生首だけになってしまうが、誰かを一泡吹かせたことに気を良くした彼は「よし!頑張ろう、俺ッ!明日から会社行くぞ!」と、奮起するのだった・・・考えてみればとても前向きな話じゃないか(^ω^;) 本作はギニーピッグシリーズの中でも異色の作品である。それはもちろん残酷映像をドキュメントタッチで描いていたそれまでの1作目、2作目の鬼畜な作風から、コメディへと大きく路線変更されていることが理由なんだけど、そうしたフットワークの軽さはシリーズの掲げる”実験”というコンセプトにも沿っていると云える。スプラッター描写に着目しつつ、人間ドラマを持ち込んだところもこの「死なない男」の魅力だ。苦悩し、傷つきながらもなんとか前に進もうと人生を模索する主人公の姿は誰もが共感出来るテーマであり、このビデオを味わい深い一本にしているポイントである。 この作品は監督の久住昌之の色合いがとてもよく出ているように思える。久住の本業は漫画家であり、漫画家が監督に起用されていることに関しては前作「血肉の華」と共通しているが、前監督の日野日出志がホラー漫画家であったことに対し、久住はギャグ漫画家であったことから、シリーズの特徴であるスプラッターを笑いの演出としてしまっているところが面白い。 心が病むと些細なことで気づける幸せを見落としがちだが、割と簡単なことで前に進む道というのは見えてきたりするもんだ。このビデオにはそんなメッセージ性があるような気がするよ。いや、本当に(笑) まぁこの「死なない男」のように手首切ったりとかする模索の仕方は絶対にできないけどさ(^∀^;) 監督の後年の代表作「孤独のグルメ」のドラマ版で共演する死なない男こと佐藤さんと監督の久住さん。「死なない男」のナンセンスな作風は後年の久住監督の代表作である「孤独のグルメ」に通じるものを感じます。 ショッキング性という部分を期待すると前2作のような衝撃は正直ないけど、本作には他のシリーズにはない人間臭いドラマと味わい深さがある。シリーズの中でも初心者向けとしてオススメできる作品です。 |